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クラウドPBXが災害時のBCP対策に最適な5つの理由と導入手順
クラウドPBXが災害時のBCP対策に最適な5つの理由と導入手順
近年、多くの企業でBCP(事業継続対策)の策定が重要視されています。
自然災害や感染症の流行などによって事業活動が継続できなければ、顧客や取引先との関係が途絶え、市場シェアの喪失や売上の大幅な減少につながる可能性があるためです。
最悪の場合、企業の存続そのものが脅かされるため、有事の際の事業活動の継続、そして迅速な復旧の道筋を確立することで、企業価値の保全に努めるという姿勢が広がっています。
BCPで対策すべき様々なリスク要因の中でも、特に重要なのが電話システムです。
顧客や取引先との主要な連絡手段である電話業務が停止すると、問い合わせ対応や受注業務などの重要な業務が中断し、ビジネス機会の損失につながります。
このような背景から、多くの企業がBCP対策の一環として、災害に強い電話システムの構築が求められており、有効な選択肢としてクラウドPBXが注目されています。
ここでは、クラウドPBXが災害時のBCP対策に適している5つの理由とBCP的な側面から選定の手順について解説します。
オンプレミスPBXが抱える災害発生時のリスク
従来のビジネスフォンでは、オフィス内にPBX(構内交換機)を設置し、電話機との間を電話回線でつなぐことで電話システムを構築しています。
このようにオフィス内にPBXを設置してシステムを構築する形態は「オンプレミスPBX」と呼びます。オンプレミスPBXでは、顧客情報や通話履歴、内線設定といった重要なデータがオフィス内に集約された状態です。
すべての通信機能やデータがオフィス内で完結していることで、災害が起きた場合に以下の3つの重大なリスクが生じる可能性があります。
- オフィス外からの電話業務継続が困難
- データ破損や復旧の長期化による業務停滞
- 高額な復旧コストの発生
上記のリスクについて詳しく見ていきましょう。
オフィス外からの電話業務継続が困難
災害時には、地震や火災による建物の損壊、洪水による浸水被害、行政からの避難指示などの理由によってオフィスの封鎖や立ち入りが禁止されることがあります。
オンプレミスPBXはシステムがオフィス内に限定されるため、外部からのアクセスが困難です。そのため、仮に電話システムに問題がなくても、電話業務がストップします。
従業員にスマートフォンを支給している場合、電話番号を知っている顧客や得意先であれば直接連絡ができるので対応は可能です。また、メール対応であればオフィス外からでもやり取りができます。
しかし、コールセンターやカスタマーセンターなど、多数のオペレーターが顧客情報を確認しながら一日数百件の問い合わせに対応する現場では電話システムが欠かせません。
オフィス外で電話業務を継続するのは難しいため、企業にとって大きな損失につながるおそれがあります。
データ破損や復旧の長期化による業務停滞
PBXは、電子回路基板やハードディスクなどの精密な部品が多数搭載された機器です。そのため、地震による衝撃や振動、洪水や消火活動による浸水といった物理的な損傷が原因で故障するケースがあります。
電話システム内のデータはPBXに集中しています。PBXの故障は、重要なビジネスデータも同時に失われるリスクがあるのです。
オンプレミス型PBXの故障においては、以下の手順での復旧が一般的です。
- 新しいPBX調達
- 設定
- バックアップデータのリストア
- 動作テスト
PBXの復旧にかかる期間は、最短でも1〜2日です。ただし、災害発生時は多くの企業が同時に復旧対応を求めるため、長引くこともあります。
また、PBXのデータをバックアップしていなかったり、データが破損していたりすると、復旧にさらに時間がかかることもあれば、果ては復旧そのものができないケースもあります。
電話業務が止まることでリスクとなるのが、問い合わせや受注の取りこぼしです。特にコールセンターでは、規模によって1日あたり数百万円の売上損失に直結するケースが想定されます。
高額な復旧コストの発生
PBXは精密機器であるため、落下・浸水・基板破損などが発生した場合は、修理よりも機器全体の交換が一般的です。
PBXを交換する場合は、電話機との互換性が必要になるため、仮に電話機に問題がなくても、新しいPBXに合わせて既存電話機を総入れ替えしなければならないケースもでてきます。
また、RTO(復旧目標時間)やRPO(復旧時点目標)を短く設定しようとすると、冗長構成や遠隔地バックアップなど高額な追加投資が必要になります。そのため、企業の規模によっては大きな負担になりかねません。
クラウドPBXがBCP対策に役立つ4つの理由
オンプレミスPBXでは災害時に電話業務が停止するリスクが高く、顧客対応の遅れや受注機会の喪失など企業にとって大きな損失につながるケースがあります。
そのため、BCP対策の観点から、クラウドPBXの導入を検討する企業が増えています。
クラウドPBXがBCP対策に役立つ主な理由は以下のとおりです。
- 災害時もオフィス外から電話業務を継続
- 災害後の復旧コストを大幅削減
- データの一元管理で迅速な復旧を実現
- 災害時の問い合わせ急増にも柔軟に対応できる
オンプレミスPBXが抱える課題を克服するクラウドPBXの具体的なメリットについて、詳しく見ていきましょう。
災害時もオフィス外から電話業務を継続
クラウドPBXの最大の強みは、インターネット回線が使える場所であれば固定電話が利用できることです。
例えば、首都圏の本社で電話業務が停止しても、大阪支社や福岡支社といった拠点、従業員の自宅からクラウドPBXに接続をすれば、PCやスマートフォンを使い、代表電話番号の受発信が可能です。
従来の電話回線を使った電話システムでは、単一経路が遮断されると通信が途絶えてしまいます。そのため、オフィスの電話回線が利用できなければ、代表電話番号による電話業務が停止します。
しかし、インターネット回線は複数の経路を選択できるため、一部の経路が使えなくなっても別の経路でクラウドPBXに接続し、電話業務を維持できます。
災害によってオフィスへのアクセスが制限されたり、建物自体が使用できなくなったりしても、インターネット環境さえ確保できれば、場所を問わず通常通りの電話業務を継続可能です。
災害後の復旧コストを大幅削減
クラウドPBXは、通話録音や顧客情報などの情報がクラウドに自動保存されるため、オフィス内でのデータ管理が不要です。
オフィスが被災してもデータが破損・消失するリスクが大幅に軽減されるので、災害時の事業継続において大きな安心材料となります。
また、通話端末として利用するノートPCやスマートフォンは、オフィスから日常的に持ち出されていることも多く、災害時に被害を受ける端末を減らせる可能性もあります。
一部の端末が被害を受けて買い替えが必要になった場合でも、クラウドPBXとの互換性を厳密に考慮する必要がなく、汎用的な端末を柔軟に利用可能です。そのため、「オンプレミスPBX+専用電話機のセット」を新調する場合と比べ、費用を大幅に抑えられます。
関連記事:クラウドPBXの導入で通話料はどう変わる?国内・国際通話の料金体系を解説
データの一元管理で迅速な復旧を実現
クラウドPBXは、本社だけでなく複数の拠点のデータも一元管理されているため、どこか一つの拠点が災害により被災しても、別の場所で端末とインターネット回線、アカウント情報さえあれば即座に復旧が可能です。
また、オフィスが浸水・倒壊するような甚大な被害を受けた場合でも、クラウドPBXで管理されているデータは無傷で残ります。電話帳や通話履歴などの重要な情報もクラウドサーバーに保管されているため、機器破損によるデータ消失の心配もほとんどありません。
このようにクラウドPBXでは復旧にかかる手間と時間を大幅に削減できます。被災直後から速やかに事業を再開できる点は、電話システムのBCP対策として大きなメリットといえるでしょう。
災害時の問い合わせ急増にも柔軟に対応できる
大規模災害が発生すると、顧客や取引先からの安否確認・営業状況や商品の納期といった問い合わせが集中しやすくなります。
限られた回線数と担当者で対応すると、緊急性の高い問い合わせに迅速に応じられなくなるため、ビジネス上の重大なリスクになりかねません。
クラウドPBXは、必要に応じて対応要員や端末を増やしやすいため、急増する問い合わせにも強いと言えます。
また、クラウドPBXに搭載されるIVR(自動音声応答)を使えば、「①納期確認はこちら」「②緊急連絡はこちら」とメニューを案内し、よくある質問は録音ガイダンスで一次応対できます。設定はオンラインで行えるため、オフィスの外からでも緊急時に合わせた変更が可能です。
その結果、災害時の限られたリソースを最大限に活用し、効率的な顧客対応の維持につながります。
関連記事:クラウドPBXのIVRは何ができる?種類とビジネスフォンとの違い
BCP対策に「最適化」するクラウドPBXの導入手順
クラウドPBXを導入してBCP対策を強化するには、自社の状況に合わせた計画と準備が欠かせません。ここでは電話業務のBCP対策に適したクラウドPBX導入の主な手順を、具体的な注意点と併せて解説します。
BCP作成とクラウドPBXに求める要件定義
クラウドPBXを導入する際は、まずBCP(事業継続計画)に求める要件を整理します。具体的には、次の項目について検討が必要です。
検討項目 | 内容 |
---|---|
目標復旧時間(RTO)の設定 | 電話システムが停止してから何時間以内に復旧させる必要があるか |
重要業務の特定 | 災害時でも継続すべき電話対応業務(顧客対応、受注業務など)の優先順位 |
必要な機能の洗い出し | 「停電時も代表番号での受電を維持」「在宅勤務でも内線通話を可能に」などの具体的な要件 |
リスク評価 | 地震、水害、パンデミックなど想定される災害と、それによる電話システムへの影響度 |
拠点間連携 | 本社被災時に地方拠点で代替対応するなど、拠点間での業務引継ぎ計画 |
上記の要件を明確にし、中小企業庁「中小企業BCP策定運用指針」なども参考にしながら、自社に最適なサービスを検討しましょう。
信頼性の高いベンダーの選定
ベンダーを選定する際は、以下の点をチェックしましょう。
- 既存電話番号の引き継ぎ
- 利用可能なアカウント数
- トータルコスト
- 通話品質
- セキュリティ体制
- 障害発生時の復旧体制と目標復旧時間
- データセンターの構成
- 導入実績と運用年数
- サポート対応時間と窓口の充実度
クラウドPBXは、同じ機能であってもベンダーによって仕様が異なります。そのため、複数社に見積もりを依頼し、内容を比較してから決めましょう。
ネットワーク環境と機器の準備
クラウドPBXを活かすには、社内外で安定したインターネット接続を確保することが不可欠です。特にオフィス内ではクラウドPBXの導入によって音声通話のデータ通信量が増加するため、既存のネットワーク環境が負荷に耐えられるかどうか事前に確認が必要です。
クラウドPBX用のスマホアプリやソフトフォンは、既存の端末でも互換性があれば利用できますが、各端末のOSバージョンやスペックを事前に確認し、必要に応じてアップデートしておきましょう。
また、クラウドPBXは、オフィスの停電時でも他の場所から電話業務を継続できますが、停電時にも対応可能な体制づくりが重要です。
例えばオフィスでIP電話機やPCのソフトフォンを使用する場合、停電時にも使えるように無停電電源装置(UPS)を導入しておけば、停電時でも社内の通信環境を維持でき、クラウドPBXを完全な状態で利用できます。
一方、社員のスマートフォンで利用する場合は各端末自体にバッテリーがあるため停電に強いですが、非常時に備えてモバイル通信容量の確保や充電手段の用意も必要です。
災害時を想定した運用テストとトレーニングの実施
クラウドPBXを導入し、通常の動作に問題がなければ、停電や在宅勤務のシナリオを設定し、代表番号着信のスマホ転送やIVRによる問い合わせ分散が機能するかを検証します。
例えば「本社の停電」を想定し、UPSの実際の持続時間を測定しながら、オフィス内の端末でどの程度対応できるかを検証します。
インターネット回線のみが遮断された場合や、本社が完全に孤立した場合など、複数の被災パターンを想定して、どの段階でどのような代替手段に切り替えるかの判断基準も明確にしておくことが重要です。
検証の結果、課題が見つかれば、ベンダーに相談して改善を図ることも重要です。
導入後の定期的な見直しと改善サイクルの確立
クラウドPBXは、導入後半年〜1年ごとに利用状況レポートを分析し、通話のピーク時間帯や応対品質を分析し、IVRシナリオや着信グループ設定を最適化します。
この機会に合わせて、BCP対策の有効性も併せて評価すると効率的です。例えば、停電・通信障害・拠点アクセス不能などの複数シナリオを用意し、クラウドPBXによる代替対応の手順確認と連絡網の確認と改善を行います。
また、訓練結果を踏まえてBCPマニュアルの修正や、権限設定の見直し、緊急連絡先リストの更新も忘れずに実施します。
新機能や新料金プランがリリースされた際には速やかに検証・導入を検討し、災害時に役立つ機能があれば積極的に取り入れます。
定期的な見直しと改善を繰り返すことで、災害発生時に「電話がつながらない」という致命的なリスクを最小限に抑えられます。
クラウドPBX「INNOVERA」でBCP対策を強化
INNOVERAは当社(株式会社プロディライト)が提供するクラウドPBXで、スマ-トフォンやPCで固定電話番号を扱える利便性と豊富な機能を搭載しています。
ここでは、INNOVERAの持つ主な特徴とメリットを紹介しながら、BCP対策の強化につながるポイントを解説します。
クラウド上のデータ一元管理で災害時も電話業務を継続
INNOVERAでは通話履歴・録音・内線設定など、電話業務に必要な情報をクラウドデータセンターで一元管理しています。
専用サーバーやPBX装置をオフィス内に置く必要がないため、地震や浸水でオフィスが機能不全に陥ってもデータは安全に保全されます。
被災直後でも、手元のPCにソフトフォンをインストールしアカウントを入力するだけで、その日のうちに代表番号へ着信を受けられる体制を復旧できます。
スマートフォンにも専用アプリ「INNOVERA Call」をインストールして、アカウント情報でログインするだけですぐに利用開始できます。これにより、災害発生時には従業員が避難先からでもすぐに代表番号での電話対応が可能になります。
IVR機能で緊急時の電話対応を自動化
災害直後は、営業状況や商品の納期確認といった問い合わせが集中しがちです。
INNOVERAにはオプションでIVR(自動音声応答)が利用できるため、よくある問い合わせについては、自動音声で一次応対が可能です。
オペレーターにつながるコール数を大幅に削減でき、回線混雑や対応遅延を防げます。
加えて、6か月間分の全通話録音や通話履歴機能も標準装備されているため、緊急対応後の検証や顧客フォローにも活用できます。どのような問い合わせが多かったか、どのように対応したかを後から確認できるため、今後の災害対策の改善にも役立ちます。
INNOVERAの導入事例
INNOVERAを導入した株式会社ラック様の事例を紹介します。
【導入目的】
- オペレーター増員に柔軟に対応できる電話システムの構築
- 顧客管理システムとの連携
- フリーアドレス型コールセンターの実現
同社のコールセンターでは、オンプレミス型のPBXを使用していましたが、オペレーター人数の増加に伴い新たな内線アカウントを追加できないという課題が発生しました。
また、顧客情報を管理する次期システムとしてサイボウズ社の「kintone」を導入予定であったため、電話システムとの連携ニーズも高まっていました。
そこで、同社は複数のクラウドPBXを比較検討した結果、「INNOVERA」の導入を決定しました。決め手となったのは、kintoneとのAPI連携が可能であること、そして福岡に支店があり迅速なサポートが受けられることでした。
【導入後の効果】
- アカウントの追加がスムーズに行えるようになった
- 顧客管理システムと連携し顧客対応の迅速化に寄与
- フリーデスクはもちろん将来的には在宅ワークも可能に
INNOVERAの導入後、同社コールセンターは、電話応対とセンター運営の効率化を実現しました。
特に大きな改善点は、架電者の情報が明確に表示されるようになり、お客様対応の質が向上したことです。
以前のシステムでは管理者のみに限定されていた通話履歴や録音音声の確認機能が、コールセンターの全スタッフに開放されたことで、「通話内容をオペレーター自身ですぐに確認できるようになった」と高い評価を得ています。
また、データ分析機能も充実しており、「コールセンタースタッフの受電数・架電数の管理や、忙しい時間帯の把握、一人ひとりの対応履歴、送客や顧客獲得の割合など、細かく分析しやすくなった」と業務改善にも貢献しています。
従来の電話システムで発生していた費用や電話回線コストも大幅に削減できたことで、コスト面での成功も報告されています。
INNOVERAへの移行は、将来的なリモートワーク環境の実現も視野に入れておられたので、これはBCP対策の強化にも直結しているといえるでしょう。
このように株式会社ラック様の事例では、INNOVERA導入によって現場の業務効率化と顧客対応品質の向上を実現しつつ、結果的に災害時の事業継続を支える電話業務のBCP強化にもつながる効果が得られました。
そのため、オンプレミスの制約を脱却し、柔軟性・拡張性とともに災害対応力を手に入れた成功事例といえます。
まとめ
従来型のビジネスフォンが抱える「災害時に停電で使えない」「在宅対応不可」「機器破損時に復旧困難」といったリスクは、クラウドPBXへの移行によって大きく解消できます。
クラウドPBXは災害時でもインターネットさえつながれば電話を継続でき、場所を選ばず利用できるためBCP対策として極めて有効です。実際に多くの企業や自治体が、大震災の教訓から通信インフラをクラウド化し事業継続性を高めています。
またクラウドPBX導入は非常時の備えになるだけでなく、平常時もリモートワーク推進や通信コスト削減、拠点間通話無料化など様々なメリットをもたらします。
そのため、「災害に強い電話環境」と「日常業務の効率化」を同時に実現できるクラウドPBXへの切り替えは、今まさに検討すべき施策と言えるでしょう。
なかでもクラウドPBX「INNOVERA」は、電話線不要のIP-Lineや充実した標準機能、国内ベンダーならではの信頼性を備えており、BCP強化に最適なサービスです。
オンプレミスからの移行手順も確立されており、短期間で導入することが可能です。
電話システムのBCP対策をお考えの企業様は、ぜひINNOVERAの導入をご検討ください。