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IP電話と固定電話の違いを徹底解説!仕組み、コスト、選び方のポイント
IP電話と固定電話の違いを徹底解説!仕組み、コスト、選び方のポイント
通信コストの削減や業務効率化のために、固定電話からIP電話へ切り替える企業が増えています。
総務省が発表している「音声通信サービスの加入契約数の状況(令和6年版)」によれば、固定電話の加入契約数は年々減少しており、2014年の2,773万契約から2023年12月時点では1,383万契約となっています。一方で、IP電話(0ABJ番号)の加入契約数は、2014年の2,848万契約から2023年12月時点では3,621万契約に増加しています。
従来、電話番号の取得方法によって固定電話からIP電話への移行が制限されており、切り替えができない状況が多く見られました。
しかし、2024年から始まった固定電話網のIP網への移行や、2025年1月からの双方向番号ポータビリティの導入により、電話番号の取得方法に関係なくIP電話へ移行できる環境が整いつつあります。
ここでは、固定電話とIP電話それぞれの仕組みの違いや特徴、切り替え時の判断材料となるメリット・デメリットについて詳しく解説します。
固定電話とIP電話のそれぞれの仕組み
固定電話とIP電話では、通信方式や使用する回線など、基本的な仕組みが異なります。
項目 | 固定電話(アナログ電話) | IP電話 |
---|---|---|
通信方式 | 電気信号 | デジタル信号 |
使用する回線 | メタル回線 | インターネット回線(光回線、Wi-Fiなど) |
固定電話とIP電話の仕組みの違いを理解することで、それぞれの特徴や選ぶ際のポイントが見えてきます。どのような違いがあるのか確認していきましょう。
固定電話(アナログ電話)は専用回線を利用する音声通話
固定電話(アナログ電話)は、日本の通信インフラの中核を担ってきた音声通話サービスです。銅線でできたメタル回線と呼ばれる専用回線を使用し、音声を電気信号に変換して通話を行います。音声は、発信側の電話機から電話に関する電気通信設備を収容した電話局を介して着信側の電話機へと伝送されます。
固定電話の接続の流れは以下のとおりです。
- 発信者が受話器を上げると、電話局へ「発信信号」が送られる
- 電話局から「ダイヤルトーン」(プーという音)が返され、発信可能な状態になる
- 発信者が電話番号をダイヤルすると、各電話局が番号を識別して接続経路を決定する
- 着信側の電話が鳴り、同時に発信者側では「呼び出し音」が流れる
- 着信側が受話器を取ると「応答信号」が送られ、通話が開始される
このような電話局を介した専用の通信網が、固定電話の基本的な仕組みとなっています。
固定電話の代表的なサービスには、NTTの加入電話と、NTT東日本やNTT西日本以外の通信事業者が提供する直収電話があります。
IP電話はインターネットを利用した音声通話
IP電話はインターネット回線を利用して音声通話を実現する通信方式です。音声データをデジタル信号に変換し、パケットと呼ばれる小さな単位に分割して送受信します。
IP電話の接続の流れは以下のとおりです。
- 電話機が音声を電気信号に変換する
- VoIPゲートウェイが電気信号をパケット(デジタルデータ)に変換する
- インターネットを経由して通話相手にパケットを送信する
- 通話相手のVoIPゲートウェイがパケットを電気信号に変換する
- 通話相手の電話機が電気信号を音声に変換する
VoIPゲートウェイは、従来の電話機の電気信号とインターネットで使用するデジタルデータの相互変換を行う装置となり、IP電話を利用する際は必須です。
IP電話は、固定電話のような専用回線を必要とせず、データ通信と同じ回線を共有しています。既存のインフラを活用でき、新たな通信設備の整備が不要となることから、IP電話サービスを提供する通信事業者が多くなっています。
双方向番号ポータビリティで切り替えの自由度が高くなった
双方向番号ポータビリティは、異なる通信事業者や電話サービス間で固定電話番号を変更せずに移行できる仕組みです。
固定電話番号はLNP(固定電話番号ポータビリティ)を利用することで、他の通信事業者に引き継ぐことができますが、従来はNTT東日本・西日本の加入電話・ISDN電話で取得した電話番号に限定されていました。
そのため、固定電話番号を直収電話で取得していた場合、他の通信事業者への引き継ぎができません。
しかし、2025年1月に開始される双方向番号ポータビリティにより、これまでLNPに対応していなかった固定電話番号も引き継ぎが可能になります。制限がなくなることで、通信事業者やサービスを自由に選ぶことが可能です。
関連記事:【2025年1月】双方向番号ポータビリティで固定電話番号の扱いはどう変わる?
IP電話と固定電話、押さえておきたい3つの違いとは?
IP電話と固定電話は、基本的な仕組みの違いに加えて、実際の利用面でも以下のような違いがあります。
項目 | 固定電話(アナログ電話) | IP電話 |
---|---|---|
取得できる電話番号 | 固定電話番号 | 050番号、0ABJ番号 |
通話に利用できる機器 | 電話機 | スマートフォン、PC、タブレット、SIP電話 |
コスト面の特徴 | 月額基本料金や通話料がIP電話よりも高い | 月額基本料金や通話料が固定電話よりも安い |
それぞれの違いについて解説します。
取得できる電話番号の種類が変わる
固定電話とIP電話では、取得できる電話番号の種類が異なります。
固定電話の場合、「0 + 市外局番 + 市内局番 + 加入者番号」という形式の10桁の電話番号が取得できます。市外局番と市内局番は、固定電話を契約した住所に該当する番号が自動で割り当てられます。
例えば、東京の市外局番は「03」、大阪は「06」です。
一方、IP電話では主に「050番号」と「0ABJ番号」2種類の電話番号が取得可能です。それぞれの特徴は以下のとおりです。
050番号
- 「050 + 通信事業者の識別番号 + 加入者番号」で構成される11桁の番号
- IP電話専用
- 全国で取得が可能
- 通話品質は固定電話と比べて若干低くなる可能性がある
0ABJ番号
- 固定電話と同じ市外局番を使用する番号(例:03、06など)
- 固定電話と同等の通話品質
- 地域性のある番号のため、該当するエリア外での取得は不可
- 信頼性が高く、ビジネス用途に適している
このように、IP電話では用途や必要な品質に応じて、適切な番号を選択できます。
関連記事:IP電話で市外局番を使う方法とメリット・デメリットを解説
関連記事:050のIP電話とは?固定電話番号との違いと利用時の注意点を解説
通信方式の違いで発生するコストに差がでる
固定電話とIP電話では、通信方式の違いにより利用料金に差が生じます。
固定電話は専用回線を使用するため、通信事業者は交換局や中継設備といった通信設備の整備・維持が必要です。発生する費用は利用者の通話料や月額利用料に反映されるため、料金が高くなる傾向があります。
一方、IP電話は既存のインターネット回線を通じて音声通話を実現します。通信事業者は、インターネット回線やその設備を他のデータ通信サービスと共有できるため、専用の通信設備を新たに整備する必要がありません。設備に関する費用を分散することで、月額基本料金や通話料を抑えられます。
通話に必要な機器が異なる
固定電話とIP電話では、通話に使用できる機器の種類が異なります。
固定電話の場合、メタル回線に直接接続できる専用の電話機以外の使用は基本的にできません。
一方、IP電話は光回線などの有線だけでなく、Wi-Fiやモバイル回線といった無線でも利用できます。そのため、以下のような機器で通話が可能です。
- スマートフォン、タブレット(専用アプリをインストール)
- PC(ソフトフォンと呼ばれる専用ソフトを使用)
- SIP電話機(LANケーブルを接続)
スマートフォンやタブレット、PCでIP電話を利用する場合、インターネット環境があればどこでも通話が可能です。このように、IP電話は従来の固定電話と比べて、利用できる端末の選択肢が広く、場所を問わない通話環境を実現できることが特徴です。
固定電話を利用するメリット・デメリット
固定電話には以下のメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット |
---|---|
・災害時でも利用可能 ・通話品質が安定している ・セキュリティリスクが低い | ・通話に利用する機器が限られる ・設置場所の移動ができない |
固定電話には、安定性と信頼性の高さという大きな強みがある一方で、コストや利便性の面で課題もあります。IP電話への移行を検討する際には、それぞれの特徴を踏まえた上で判断することが重要です。以下でそれぞれの特徴を詳しく解説します。
通話品質が安定している
固定電話は、通話相手と1対1で直接接続をするため、IP電話のように他のデータ通信の干渉を受けません。また、天候の影響も受けにくく、通信速度の変動もないことから、クリアな音声品質を維持できます。
停電時でも通話ができる
専用回線には電話局からの送られる電力が直接供給されており、外部からの電源供給がなくても通話が利用可能です。一方、IP電話はインターネット回線や通信機器に外部からの電源供給が必要なため、災害による停電時には通話ができません。そのため、固定電話は災害時の重要な通信手段として機能します。
オフィス外では利用できない
固定電話は電話機と電話回線が直接接続されているため、設置場所から移動して使用することは基本的にできません。また、電話番号も契約時に登録した所在地でしか利用できないので、近年のリモートワークの増加により、利用場所の制限が事業活動の妨げとなるケースも増えてきています。
そのため、用途や環境に応じて、IP電話との使い分けや段階的な移行を検討する企業が増えているのが現状です。
IP電話を利用するメリット・デメリット
固定電話には以下のメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット |
---|---|
・提供されるサービスが多い ・様々な端末で利用可能 ・場所を選ばず利用できる | ・インターネット回線の品質に依存 ・停電時は利用できない ・セキュリティ対策が必要 |
IP電話は、コスト面での優位性と多様な機器が利用できるというメリットを持つ一方で、インターネット回線への依存やセキュリティ面での課題もあります。
そのため、導入を検討する際には、通信環境や利用形態を考慮することが重要です。以下で、それぞれの特徴を詳しく解説します。
サービスを提供する通信事業者が多い
固定電話は、サービスを提供する事業者が限られているのに対し、IP電話は多くのインターネット接続事業者(ISP)がサービスを提供しています。
各事業者は独自の料金体系や機能を設定しており、通話料や月額基本料金、付加サービスなども様々です。そのため、企業は自社の業務内容や利用形態、予算に最も適したサービスを選択できます。
また、事業者間の競争により、サービスの品質向上やコスト削減にもつながっています。
高い利便性と柔軟な運用
IP電話は、スマートフォン、タブレット、パソコンなど、様々な端末で利用できる点も大きな特徴です。専用アプリやソフトウェアを導入することで、オフィスの内外を問わず通話が可能になります。
通話品質が不安定になりやすい
IP電話の通話品質は、インターネット回線の状態に依存します。そのため、回線が混雑している時間帯や通信速度が遅い環境では、音声の遅延や途切れが発生する可能性があります。
例えば、オフィスで多くの従業員が同時にWeb会議を行っている時間帯や、大容量のファイルをダウンロードしている際には、通話品質が低下することがあります。また、建物の地下のような電波状態が不安定な場所では、スマートフォンの電話がつながりにくいため、通話相手の音声が聞き取りにくくなることがあります。
安定した通話品質を確保するには、十分な帯域幅を持つインターネット回線が必要です。特に、複数の拠点で同時に多数の通話を行う場合は、回線の増強や通信帯域の確保を検討する必要があります。
セキュリティと安定性の課題
IP電話の通話データは一般のネットワークを経由して送受信されるため、通信の傍受や不正アクセスによる情報漏えいの危険性があります。
安全に利用するには、通話の暗号化やファイアウォールの設定など、適切なセキュリティ対策が必要です。特に機密情報を含む通話が多い企業ではあえて固定電話を使うケースもあります。
IP電話とクラウドPBXの組み合わせて利便性が向上する
クラウドPBXとは、従来のPBX(構内交換機)をクラウド上で実現するサービスです。
従来のPBXは、企業内に物理的な交換機を設置し、内線通話や外線への接続、着信の振り分けなどを管理していました。これに対し、クラウドPBXはすべてクラウド上で提供します。
クラウドPBXの通話にはIP電話を使用するため、スマートフォン、タブレット、PC、SIP電話機など、様々な通信端末に対応しています。インターネット環境があればどこからでも固定電話番号(0ABJ番号)を使用した通話が可能です。
IP電話サービスだけを契約した場合、それぞれの回線や端末ごとに異なる電話番号が必要となり、一つの電話番号を複数の端末で共有することはできません。
しかし、クラウドPBXを利用することで、オフィスで取得した固定電話番号を複数の端末で共有でき、どの端末からでも同じ番号で発着信が可能になります。
また、端末同士で内線ができるため、通話料の大幅な削減が可能です。
例えば、営業担当者が外回り中にスマートフォンを使って会社の固定電話番号で顧客に電話をかけたり、内線で同僚と打ち合わせをしたりできます。
また、リモートワーク中の従業員が、パソコンを使ってコールセンターのような電話業務を行うことや、現場作業中の担当者がタブレットを使って本社のサポートデスクに問い合わせるなど、場所を問わず必要な時に必要な連絡を取れます。
クラウドPBXを導入することで、オフィスでの利用だけでなく、外出先でのビジネス通話やテレワーク中の電話対応、さらには複数拠点での内線通話まで、多様な働き方への柔軟な対応が可能です。
クラウドPBX「INNOVERA」で最適な電話システムを構築
クラウドPBXは多くの企業がサービスを提供していますが、その中でも当社(株式会社プロディライト)が提供するINNOVERAは、「わかりやすさ」を追求して設計しているのが特徴です。ITに関する知識がなくても、マニュアル無しで簡単に設定ができます。
また、スマートフォン、タブレット、PC、SIP電話機など、様々な通信端末に対応しており、インターネット環境があればどこからでも固定電話番号を使用した通話が可能です。そのため、オフィスでの利用だけでなく、外出先でのビジネス通話やテレワーク中の電話対応、さらには複数拠点での内線通話まで、多様な働き方に柔軟に対応できます。
クラウドPBXに必要なサービスをワンストップで一括導入
当社では、INNOVERAに加えて、IP電話サービス、インターネット回線、SIP電話機など、クラウドPBXの運用に必要なすべてのサービスを取り扱っています。
ワンストップで導入できれば、複数のベンダーと個別に契約を結ぶ必要がないため、導入時の手続きが大幅に簡略化されます。
また、必要な機器やサービスをすべて当社で調達できるため、導入までの時間も短縮できます。システムの運用開始後も、すべての問い合わせやサポートを当社で一括して対応します。通話品質や機器の不具合など、何か問題が発生した際も、どの部分が原因なのかを自社で切り分けることなく迅速な対応が可能です。
API連携で柔軟なカスタマイズができる
INNOVERAは外部システムとのAPI連携が可能です。既存のシステムとの連携や独自の機能追加など、柔軟にカスタマイズできます。
例えば、顧客管理システム(CRM)と連携することで、着信時に顧客情報を自動表示できます。電話が鳴った瞬間に顧客の過去の問い合わせ履歴や購入履歴が画面に表示されるため、オペレーターは顧客の背景を理解した上で会話を始められます。
結果、応対品質の向上と業務効率化を同時に実現可能です。
また、商談管理システムとの連携では、電話での商談内容を自動的に案件情報として記録し、営業活動の進捗管理に活用できます。このように、API連携を活用することで、企業の既存システムと電話システムを有機的に結びつけ、業務全体の効率化を図れます。
INNOVERAの導入事例
サッカーチームの運営やサッカースクール事業を展開している株式会社ブラウブリッツ秋田では、電話業務について以下のような課題を抱えていました。
■導入前の課題
- スタジアムでの試合や準備のため、従業員の不在時の電話対応ができなかった
- 社用携帯がなく、個人の携帯電話で業務連絡を行わざるを得なかった
- 休日の電話対応にばらつきがあり、お客様に混乱を招いていた
- お問い合わせの留守電や着信履歴が多数残り、管理が困難だった
同社はサッカーチームの運営を行っているため、週末のスタジアムでの試合や準備などで従業員が会社を不在にすることが多く、その間の電話対応が大きな課題となっていました。
また、社用携帯電話がなかったため、従業員は個人の携帯電話で業務連絡を行わざるを得ない状況でした。さらに、休日の電話対応にも一貫性がなく、お客様に混乱を招くケースが発生していました。電話の応対履歴や留守番電話の管理も煩雑で、効率的な運用が困難な状況でした。
上記の課題を解決するため、経費削減と業務効率化を目指してINNOVERAの導入を決定しました。
■導入後の効果
- スタジアムにいても携帯電話で会社の電話に対応可能になった
- 個人の携帯電話を業務で使用する必要がなくなった
- 2回線契約により、会社と教室それぞれの問い合わせを1台の携帯で受けられるようになった
- 営業時間外の着信制限やガイダンス設定により、明確な営業時間の案内が可能になった
- 担当者への転送がスムーズになり、業務効率が向上した
- 会社の番号での折り返し電話が可能になり、お客様との連絡がスムーズになった
INNOVERAの導入後は、土日の試合開催時でも従業員がスタジアムから電話対応できるようになりました。その結果、お客様をお待たせすることが減り、顧客サービスの品質が向上しました。
また、営業時間の設定や着信制限機能により、休日対応の基準が明確になり、従業員の働き方も改善されています。
まとめ
固定電話とIP電話では、通信方式やインフラ環境、コストなど様々な面で違いがあります。
特に従業員の外出が多い企業では、利用場所の限定される従来の固定電話だと対応が難しいケースがあります。しかし、IP電話であれば、インターネット環境があれば場所を問わず利用できるため、外出先でも電話対応が可能です。
また、IP電話とクラウドPBXを組み合わせることで、固定電話番号を複数の端末で共有でき、場所を問わずに利用できます。設定した端末同士で内線通話ができるため、通話料の削減も可能です。
株式会社プロディライトでは、クラウドPBX「INNOVERA」の提供に加え、IP電話サービスやインターネット回線、SIP電話機など、電話システムの運用に必要なすべてのサービスをワンストップで提供しているため、効率的な導入が可能です。
通信環境の変化に伴い、ビジネスの電話システムも変革期を迎えています。業務効率化や顧客満足度の向上を目指す企業様にとって、クラウドPBXの導入は有効な選択肢となるでしょう。