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IP電話でFAXは使える?3つの選択肢と設定時の注意点
IP電話でFAXは使える?3つの選択肢と設定時の注意点
IP電話は、通話料の削減やBCP対策といった多くのメリットがあるため、多くの企業で従来の固定電話回線からの移行が進んでいます。
しかし、IP電話に移行する際、問題となるのがFAXです。
実は、IP電話でFAXを利用する場合、環境によっては送受信が不安定になるため、安定した運用には設定や機器の追加が必要になる場合があるのです。
では、IP電話に移行する際、FAXを安全に運用するにはどのような方法があるのでしょうか。
本記事では、IP電話環境でFAXを活用する3つの方法と、安定運用のための設定ポイントを解説します。
IP電話でFAXを使う3つの運用方法
IP電話でFAXを利用する場合、大きく分けて3つの方法があります。
- 既存FAX回線を残してIP電話と並行運用
- FoIPでIP電話上に統合
- クラウドFAXでペーパーレス化
それぞれに長所と短所があり、企業の規模や業務内容、既存設備の状況によって最適な選択は異なります。
3つの運用方法を確認して、効率化とコスト抑制のバランスを取りながら導入方法を決めましょう。
既存FAX回線を残してIP電話と並行運用
安定したFAX運用として確実性が高いのが、通話はIP電話、FAXは従来のアナログ回線と複合機を維持する方法です。
並行運用することで、音声通話のコスト削減というIP電話のメリットを享受しつつ、FAXの安定性は従来通り確保できます。特に重要な契約書や図面など、確実に送受信する必要がある書類を扱う企業にとっては安心感のある選択肢となります。
ただし、この方法ではオフィスでしかFAXを送受信できません。テレワークが進む中、FAXのために出社するのは非効率です。さらに、機器の維持管理や紙の保管スペースも必要です。
FoIPでIP電話上に統合
FoIP(Fax over IP)は、ATA(アナログ電話アダプタ)を使用して既存のFAX機器をIP電話網に接続する技術です。ATAを介することで、アナログ信号をデジタルデータに変換し、IP網上での送受信を可能にします。
しかし、FAX機器の多くはアナログ回線での使用を前提に設計されており、IP網では通信エラーが発生する可能性があるため運用では注意が必要です。
特に高速通信規格のスーパーG3モードは、IP網でのパケットロスや遅延の影響を受けやすく、通信失敗の原因となることがあります。
安定した運用には、FAX機の通信速度をG3標準(14.4kbps以下)に設定し、必要に応じてエラー訂正機能(ECM)の調整も行う必要があります。また、ネットワーク側でもIPoE接続方式への切り替えなど、遅延を最小限に抑える工夫が求められます。
ATAについても、T.38プロトコルに対応した機器を選択することで、音声コーデックを使用せずにFAXデータを直接IP網で伝送でき、より安定した通信が期待できます。
クラウドFAXでペーパーレス化
クラウドFAXとは、インターネットを通じてPCやスマートフォンでFAXを送受信できるサービスです。FAX機器や専用回線が一切不要となり、パソコンやスマートフォンから直接FAXの送受信が可能になります。
受信したFAXはPDFファイルとして保存され、必要な書類だけを選択して印刷できるため、用紙やトナーのコストを大幅に削減できます。誤送信防止機能や承認フローの実装も容易で、セキュリティ面でも従来のFAXより優れています。
また、クラウドFAXは、場所を選ばずFAX業務が行えることも大きなメリットです。インターネット環境があればFAXの確認と送信ができるため、在宅勤務中や外出先であってもFAXを確認できます。
API連携により他の業務システムとの連携もでき、受注管理システムや顧客管理システムと連携させることで、FAX受信から業務処理までの一連の流れを自動化し、人的ミスの削減と処理時間の短縮を実現できます。
差出人情報やキーワードによる自動仕分け機能を活用すれば、受信FAXの処理効率が飛躍的に向上します。
関連記事:クラウドFAX6種類を比較!最適なシステムを選ぶポイントとは?
IP電話とアナログ電話におけるFAX利用の違い
IP電話とアナログ電話では、FAX通信の仕組みに根本的な違いがあります。この違いを理解することが、適切な運用方法の選択と安定稼働の実現につながります。
技術的な相違点だけでなく、番号体系や必要な設定も異なるため、移行時には慎重な検討が必要です。
信号伝送の仕組みの違い
アナログ回線のFAXとIP電話のFAXでは、信号伝送の仕組みが異なります。
それぞれの送受信方法は以下の通りです。
アナログ回線FAX | IP電話FAX | |
---|---|---|
信号の種類 | アナログ音声信号(G3FAX規格)をそのまま送受信 | デジタルデータに変換してIPネットワークで送受信 |
通信経路 | 電話回線(PSTN)を使用 | インターネット回線(VoIP網)を使用 |
送信方式 | モデムでアナログ信号を直接送信 | 音声コーデック(G.711など)やT.38プロトコルでデータ化して送信 |
安定性 | ノイズに強く、通信エラーが少ない | ネットワーク遅延・パケットロスに影響を受けやすい |
必要機器 | FAX複合機+アナログ回線 | FAX複合機+VoIPアダプタまたはクラウドFAXサービス |
アナログ回線のFAX通信は、音声信号を直接画像データに変換して送信する仕組みです。信号の劣化が少なく、安定した通信が可能です。
一方、IP電話でFAXを送信する場合、まず音声信号をデジタルデータに変換し、インターネット経由で送信後、受信側で再び音声信号に戻してから画像データに変換するという複雑な工程を経ます。
IP電話のFAXでは、変換過程でデータの欠損や遅延が発生しやすく、特に高速通信時にはエラーの原因となります。IP網特有のパケットロスやジッタ(遅延のばらつき)も、FAX通信の品質に直接影響を与えます。
そのため、IP電話でFAXを使用する場合は、通信速度を意図的に落とし、エラー訂正機能を適切に調整することで、安定性を確保する必要があります。
対応機器と設定の違い
アナログ電話とIP電話では、FAXを使うときに必要な機器と設定が異なります。
FAX機の多くは、モデム音(ピーヒョロ音)で通信条件を合わせ、直接アナログ信号としてデータを送受信します。そのため、アナログ回線では、FAX機と電話回線をつなぐだけで送受信が可能です。
一方、IP電話では音声やFAX信号はデジタルデータに変換され、インターネット網を通ってパケットとして送られます。
このとき圧縮コーデックやネットワーク遅延、パケットロスの影響を受けるとFAX信号が正しく再現できず、通信エラーが発生しやすくなります。
安定して送受信するためには、FAX機を標準G3モードに設定して通信速度を落としたり、T.38対応のATA(アナログ変換アダプタ)を利用したりするなど、環境に応じた調整が必要です。
IP電話でFAXを利用する際の注意点
IP電話環境でFAXを安定稼働させるには、機器側とネットワーク側の両面から適切な対策を講じる必要があります。
トラブルの発生を防ぐためにも、事前の設定調整と環境整備について確認しておきましょう。
FAX側の設定見直し
IP電話でFAXを使用する際、最初に行うべきは通信速度の調整です。
スーパーG3(最大33.6kbps)での通信は避け、G3標準(14.4kbps以下)に固定します。多くの複合機では、管理者メニューから通信モードを変更できます。メーカーによって設定項目の名称は異なりますが、「V.34無効」や「G3モード固定」といった項目を探してください。
また、エラー訂正機能(ECM)の設定も重要です。ECMは通信エラー時に自動で再送を行う機能ですが、IP網では軽微なエラーが頻発するため、かえって通信を不安定にすることがあります。状況に応じてECMをオフにすることで、多少の画質劣化と引き換えに通信の成功率を上げられます。
ダイヤル方式はプッシュ回線(トーン)に設定し、パルスダイヤルは使用しないことも基本です。また、特定の相手先との通信が失敗する場合は、相手側の設定も確認し、両者で通信速度を合わせる調整が必要になることもあります。
その他の重要な設定として、送信レベルの調整があります。IP網では信号レベルが高すぎると歪みが発生しやすいため、標準レベルよりも2〜3dB低く設定することで安定性が向上する場合があります。
ネットワーク品質の確保
IP電話でFAXを利用する場合、ネットワーク品質の確保が通信成功率を大きく左右します。
ベストエフォート型の光回線では、混雑時にパケットロスや遅延が発生し、FAXが途中で切れるリスクがあるので、帯域保証型のサービスや専用線を導入し、安定した伝送路を確保しましょう。
社内ネットワークでは、QoS(Quality of Service)設定を行い、FAX通信やT.38パケットを優先的に処理することで、音声通話と競合してもエラーを最小限に抑えられます。
また、インターネットへの接続は、有線LANが推奨されます。Wi-Fiでは電波干渉や一時的な接続不安定が起こりやすく、FAXの送受信に影響します。
ネットワーク監視ツールで定期的に品質を測定し、パケットロス率や遅延を把握することも重要です。特にエラーが頻発する時間帯を特定すれば、回線増強やQoS設定の見直しといった根本対策が可能になります。
CLOUD-FAX-WEBでIP電話×FAXをシンプルに
当社(株式会社プロディライト)が提供するCLOUD-FAX-WEBは、クラウドPBXとFAX機能をひとつにまとめたサービスです。
PCやスマートフォンのブラウザからどこでもFAXの送受信ができ、受信FAXはPDFで確認できるため機器の設置や複雑な設定が必要ありません。
さらに、送信履歴や配信状況をリアルタイムで確認できるので、通信エラーが起きてもすぐに対応可能です。既存のFAX番号をそのまま使えるため、番号変更の案内などの手間もかかりません。
CLOUD-FAX-WEBであれば、FAXをテレワークや外出先でも利用できるため、ペーパーレス化と業務効率化を同時に進められます。
ブラウザからの直感的FAX送信操作
CLOUD-FAX-WEBの最大の特徴は、特別なソフトウェアをインストールする必要がなく、対応ブラウザからログインするだけですぐにFAX送信ができる点です。
送信したいファイルをアップロードして宛先番号を入力するだけなので、パソコンに不慣れな従業員でも迷わず利用できます。
送信前にはプレビュー画面で内容と宛先を確認できるため、誤送信が起こりにくくなっています。
また、最大100件への一斉送信(実装予定)や送信予約機能にも対応し、業務の効率化に貢献します。送信履歴は6か月間保存され、リアルタイムで送信状況を確認できるので、成功・失敗の判別や再送信もスムーズです。
操作画面は直感的で、従来のFAX機に慣れた社員でもすぐに使いこなせます。複数ユーザーが同時にアクセスして作業できるため、いつでも待ち時間なく送信できます。
ペーパーレスでコスト削減
従来のFAXでは書類を紙に印刷してから送信する必要があり、用紙代やトナー代が継続的に発生していました。
しかし、CLOUD-FAX-WEBならデジタルファイルを直接送信できるため、印刷の手間とコストが不要になり、年間で大幅な削減効果が期待できます。
受信したFAXも、必要なものだけを印刷できるので、大量の用紙を保管するスペースも不要になり、オフィスを有効活用できます。
外出先でもFAXの送受信ができるCLOUD-FAX-WEBはこちら
INNOVERAの導入事例
JR大阪駅直結の人間ドック専門施設「TOKUSHUKAI INTERNATIONAL Medical Check-up OSAKA(TIMC OSAKA)」では、最新鋭の医療設備にふさわしい効率的な通信環境を実現するため、INNOVERA(イノベラ)を導入しました。
同施設では、賃貸物件への移転を機に、以下の課題について解決策を検討していました。
- 従来のPBXと電話線の撤去
- ナースコールと連携できるスマートフォン対応の電話サービスの導入
- 大量に届く営業FAXによる用紙やインクの無駄の削減
約20社のIP電話サービスを比較検討した結果、完全クラウド型で物理的な機器設置が不要であること、既存のナースコールシステムとスマートフォンで連携できることが決め手となり、INNOVERA(イノベラ)を選択しました。
INNOVERA(イノベラ)の導入後は、以下の効果を得ることができています。
- PBXや電話線の撤去による省スペース化
- FAX内容のPDF化によるコスト削減と出力の取捨選択
- ナースコールや内線をスマートフォンで受け付け
同社では、従来の大型PBXと電話線を撤去し、省スペース化とスマートフォンによる内線・ナースコールの一元管理を実現しました。さらにFAX業務の効率化を目的としてCLOUD-FAX-WEBを追加導入し、営業FAXはPDFで確認して薬品発注など必要なものだけを印刷できるようになりました。
これにより、用紙やトナーの無駄を削減し、コスト削減と業務効率化を段階的に実現しています。
2025年9月には東京・豊洲の新施設にも同じ構成で導入予定で、医療機関でもIP電話とFAXを一度に移行できることを示す事例となっています。
よくある質問(FAQ)
IP電話でFAXを利用する際の代表的な疑問について、実践的な回答をまとめました。
既存FAX番号の継続・番号ポータビリティは可能?
既存番号の継続可否はサービスにより異なります(050のみ・新規番号のみ・市外局番も可 等)。
番号ポータビリティに対応したサービスを選択すれば、取引先への番号変更の通知が不要となり、スムーズな移行が実現できます。ただし、すべての番号が移行可能なわけではないため、事前にサービス提供者への確認が必要です。
不可の場合は既存番号→新番号への転送や、アダプタ併用で段階移行が可能です。転送には費用が発生しますが、移行期間の暫定措置として有効な選択肢となります。
送受信ログ管理・誤送信対策の設計方法は?
誤送信防止には、送信前のプレビュー確認機能や、重要FAXに対する承認フローの導入が効果的です。システム的に宛先の二重チェックや警告表示を実装することで、ヒューマンエラーを大幅に削減できます。
スーパーG3で失敗が多い・特定相手だけ通らない原因は?
スーパーG3(33.6kbps)の高速通信は、IP網でのパケットロスや遅延の影響を受けやすく、通信失敗の主要因となります。
解決策は、FAX機の設定をG3標準(14.4kbps以下)に変更することです。多くの機器では管理者メニューから「V.34無効」や「G3モード固定」の設定が可能です。
また、特定の相手との通信が失敗する場合、相手側もスーパーG3対応機器を使用している可能性があります。双方でG3モードに設定を合わせることで、通信の安定性が向上します。
まとめ
IP電話環境でFAXを利用する方法は、既存回線の並行運用、FoIPによる統合、クラウドFAXへの移行の3つから選択できます。
多くの企業にとって最適な選択となるのが、クラウドFAXです。コスト削減と業務効率化を同時に実現でき、テレワークにも対応できます。
当社(株式会社プロディライト)が提供するINNOVERA(イノベラ)なら、クラウドPBXと連携した柔軟なIP電話環境を構築できます。さらにCLOUD-FAX-WEBを組み合わせれば、ブラウザから簡単にFAX送受信が可能になり、ペーパーレス化と業務効率化を同時に実現できます。
IP電話への移行に伴うFAXの運用に課題を感じている企業様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。専門スタッフが貴社の環境に合わせた最適な導入プランをご提案します。