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コールセンターで通話録音はなぜ必要?法的対応と選定ポイントを解説
コールセンターで通話録音はなぜ必要?法的対応と選定ポイントを解説
コールセンターにおける電話応対は、オペレーターと顧客が1対1で通話を行う閉鎖的な環境で実施されることが一般的です。
第三者が介入する機会が限られることで、トラブルが発生したときの客観的な検証が困難です。そのため、近年では電話応対の透明性を確保し、リスクを管理する観点から、通話録音システムの導入が業界標準になりつつあります。
しかし、通話録音の導入を検討する際には、法的課題や技術的問題など多くの課題があります。また、自社のコールセンター規模や業務特性に最適なサービスを選定する難しさも無視できません。
ここでは、コールセンターにおける通話録音の必要性や法的な位置づけ、導入が進んでいる背景、サービスを選定する際のポイントを解説します。
コンタクトセンターにおける通話録音の法的対応
コールセンター録音に関する法的な位置づけや注意点については以下のとおりです。
- 通話録音の違法性は低い
- 個人情報の取り扱いには注意が必要
コールセンターで録音機能を導入する前に、基本的な法律知識を押さえておくことは、トラブル防止や顧客信頼構築にもつながります。
それぞれ詳しく解説します。
通話録音の違法性は低い
音声通話の録音について懸念となるのが違法性です。
録音によって法的紛争に発展した場合、企業の社会的信用やブランドイメージが大きく損なわれ、長期的な事業の運営に影響を及ぼすおそれがあります。しかし結論から言えば、日本の法律上、音声通話の録音自体は違法ではありません。
録音が違法にならない理由は、通話の当事者が自分と相手とのやり取りを「当事者録音」として記録する行為には、盗聴や有線電気通信法違反などの刑事罰を科す特別法が存在しないためです。
また、最高裁における平成12年7月12日の判決では当事者が同意なく録音したテープにも証拠能力を認めています。民事裁判でも「著しく反社会的な手段」で収集したものでなければ証拠排除の対象にならないという実務が確立しているのです。
ただし、「録音はしない」と言っておきながら、実際には録音を行うことや、意図的に相手を騙すような形で録音するケースでは、個人情報保護法第17条の「適正な方法で個人情報を取得しなければならない」という規定に抵触する場合があります。
そのため、コールセンターでは冒頭で「この通話は品質向上のため録音させていただきます」とアナウンスを流すのが一般的になっています。これにより、顧客も安心して会話ができ、企業側もトラブルを未然に防ぐことができます。
個人情報の取り扱いには注意が必要
コールセンターでの通話録音は法律的に問題ありませんが、録音内容には顧客の名前や電話番号など、個人情報が多く含まれるため、企業側には「適切な管理」が求められます。
この管理を怠った場合、以下のようなリスクが発生します。
想定されるリスク | 法律・責任 | 具体例 |
---|---|---|
録音内容の外部漏洩 | 民法709条(不法行為責任) | 顧客の住所やカード番号が社外に漏洩、損害賠償請求を受ける |
名誉毀損による損害賠償 | 刑法230条1項(名誉毀損罪) | 顧客の会話内容が社内で不適切に共有され、評判を傷つける |
利用目的を超えたデータ利用 | 個人情報保護法27条(利用停止・消去請求) | 録音データを社内の教育以外の用途に使い、顧客から苦情が来る |
また、個人情報保護法第20条では、録音データを含む個人情報の漏えい・消失・損壊を防ぐための安全管理措置が企業に義務付けられています。これらの具体的な実施方法については、厚生労働省の「雇用管理分野における個人情報保護に関するガイドライン」を参考にしてください。
コールセンターで通話録音の導入が進む「背景」
コールセンター業界においては、通話録音の導入が加速していますが、背景には、以下の5つの理由があります。
- オペレーター教育・トレーニングの効率化
- 顧客インサイト獲得への期待
- リモートワーク環境における応対品質の管理
- トラブル発生時の証拠確保と解決時間の短縮
- カスタマーハラスメント対策と従業員の保護
最近では、単なるトラブル防止にとどまらず、会社全体の働き方改革や顧客対応品質の向上にも、通話録音の活用が広がっています。
それぞれ詳しく解説していきます。
オペレーター教育・トレーニングの効率化
コールセンター業務において、ベテランと新人オペレーターの対応品質の差は、よく挙げられる課題のひとつです。
しかし、日々の業務に追われる中、十分な教育時間を確保できず、悩まれている管理者の方も少なくないでしょう。こうした場合、通話録音を活用することで、実際の対応例を新人教育に役立てることが可能になります。
例えば、ベテランオペレーターの通話を録音し、それを教材として共有することで、新人オペレーターも実践的なスキルを効果的に習得できるようになります。また、管理者は録音データをもとに、より具体的で説得力のあるフィードバックを行えるため、改善点だけでなく、良好な対応事例を示しながらの指導が可能です。
このように通話録音を教育に活用することで、トレーニング期間の短縮と対応品質の均一化が実現し、結果として顧客満足度向上が期待できます。
顧客インサイト獲得への期待
近年では、お客様の本音や隠れたニーズである「顧客インサイト」の把握に期待が高まっています。
顧客インサイトを的確に把握することで、競合他社と差別化された製品開発が可能となり、マーケティング効率の向上が実現するためです。このような取り組みは顧客の継続的な利用や愛着を高め、最終的には収益性の大幅な改善につながります。
通話録音には、リアルな顧客の声がそのまま詰まっており、企業にとって非常に貴重な情報源です。例えば、同じような問い合わせやクレームが何度も寄せられている場合、録音データを分析することで、商品説明のわかりにくさやサービス内容への不満といった改善点を早期に発見できるのです。
また、最近では音声データをAIで分析し、顧客の感情の変化や、満足・不満足の兆候を数値化する技術も普及し始めています。従来は感覚頼りだった対応品質の評価も、録音データをもとにした客観的なデータとして活用できるようになっています。
通話録音は、顧客インサイトの獲得につながるツールとしての側面もあることから、コールセンターでの導入が進んでいる理由の一つとなっています。
リモートワーク環境における応対品質の管理
コールセンター業界では、近年リモートワークの導入が急速に広がっています。
一般社団法人日本コンタクトセンター協会『2024年度 コールセンター企業 実態調査』によると、在宅勤務を「すでに採用している」と回答した企業は65社中35社(53.8%)にのぼります。さらに、採用理由として「働き方の多様化に対応するため」が35社中30社(85.7%)という理由を挙げており、企業側の柔軟な働き方への対応意識が高まっていることが明確に示されています。
参考:『2024年度 コールセンター企業 実態調査』報告|一般社団法人日本コンタクトセンター協会(CCAJ) 情報調査委員会
しかし、在宅勤務では、オペレーターの応対をすぐ近くで確認することができません。
だからこそ、通話録音は対応品質を保つための心強いシステムになります。録音しておけば、後からやり取りを確認できるため、案内の内容や対応が適切だったかを客観的に見直すことができます。
万が一、トラブルが起きた際も、録音データを確認すれば、事実確認が速やかに行うことができ、顧客への対応も早く正確になります。
通話録音は、応対品質を守るだけではありません。オペレーターを支え、トラブル対応力を高めるためにも、今や欠かせない仕組みとなっているのです。
トラブル発生時の証拠確保と解決時間の短縮
コールセンターでは、オペレーターが日々さまざまなお客様の応対を行っています。
時には、言った・言わないの食い違いや、認識のズレが原因でトラブルになることもあります。こうした場面では、通話録音が事実確認の証拠になります。
例えば、録音データがあれば、通話内容を迅速に確認でき、対応の正当性を客観的に証明できます。これにより、トラブルの長期化を防ぎ、対応にかかる時間を短縮できます。対応が迅速になれば、お客様の不満を抑え、信頼回復にもつながります。
また、録音データは、不当な要求や理不尽なクレームに対しても、冷静に事実を示すことで、企業側の立場を守ることができるのです。
トラブル対応の速さは、コールセンター全体の評価にも影響します。録音データを活用すれば、対応の質だけでなく、対応スピードも高めることができ、顧客満足度の向上につながる重要なポイントになります。
カスタマーハラスメント対策と従業員の保護
近年、コールセンターでは、カスタマーハラスメント(カスハラ)への対応が重要な課題となっています。
パーソル総合研究所の調査によると、サービス職の35.5%が、顧客からのハラスメントや嫌がらせを受けた経験があると回答。さらに、ここ3年以内だけでも20.8%が被害を受けており、32.6%が「カスハラが増えた」と感じているという結果が出ています。
参考:カスタマーハラスメントに関する定量調査|株式会社パーソル総合研究所
電話応対の中で、暴言や不当な要求によってオペレーターの心がすり減ってしまうケースは、決して少なくありません。
しかし、録音が残っていれば、どのようなやりとりが行われたかを客観的に示すことができ、企業としても冷静かつ適切な対応がしやすくなります。
また、録音があることで、オペレーターも「必要なら、上司が内容を確認し、守ってくれる」という安心感を持って対応できます。この安心感が、離職防止やメンタルケアにもつながっていきます。
カスハラへの対応は、放置すれば従業員の疲弊だけでなく、企業全体への信頼低下につながるおそれがあります。通話録音を活用し、現場での負担を減らしながら、適切で速やかな対応を行える環境づくりが求められています。
関連記事:カスハラから従業員を守る!企業の電話対応を変える効果的な対策とは?
通話録音を選定する5つのポイント
通話録音システムを導入する際には、ただ「録音できればよい」と考えるのは危険です。
ここでは、企業が通話録音を選ぶときに確認しておきたい5つの重要なポイントを解説します。
- 録音データの保存容量と期間
- 録音可能な音声通話の範囲
- 既存システムとの互換性
- 個人情報保護に必要なセキュリティ対策
- 初期費用と運用コストのバランス
詳しく解説していきます。
録音データの保存容量と期間
録音データを管理する際に最初に考慮すべき点は、保存容量と保存期間です。
録音データは、1回の通話が数分でも、日々積み重なることで膨大なデータになります。一般的な音声録音では、1時間あたり約50〜60MBの容量が必要とされ、100人規模のコールセンターでは月間で数百GBにも達することがあります。
そのため、どのくらいのデータを、どのくらいの期間保存するのかを事前に明確に決めておくことが重要です。保存期間を短くしすぎると、確認の際にデータが消去されている可能性があります。反対に保存期間が長すぎると、データの容量不足や管理コストがかさんでしまうこともあります。
トラブル対応や顧客との取引内容によって、適切な保存期間を設定し、容量の見積もりをしっかり行うことが、運用トラブルを防ぐポイントです。
録音可能な音声通話の範囲
録音システムを選ぶ際は、録音の対象範囲も確認しましょう。
通常、音声通話の録音対象は外線が中心です。しかし、コンプライアンス遵守やハラスメント防止の観点からも、従業員同士の内線も録音対象にすることで、リスク管理が格段に向上します。
例えば、コールセンターの責任者がオペレーターに内線でハラスメント発言を行った場合、録音をしておくことで客観的な証拠として記録が残ります。オペレーターが問題を申告した際に、録音データで事実関係を確認でき、単なる主観的な印象ではなく客観的な証拠に基づいた公正な判断が可能です。
また、問題の早期発見と迅速な対応ができ、企業としての責任ある対処を示せるため、訴訟リスクや風評被害の軽減につながります。
さらに、通話が録音されているという認識自体が強力な抑止力として機能し、従業員が不適切な発言や指示を控える動機付けとなります。そのため、問題行動の発生そのものを未然に防ぐ予防効果も期待できます。
既存システムとの互換性
録音システムを導入する際には、既存の顧客管理システム(CRM)や電話システムと連携できるかを確認することが大切です。
現在のビジネスフォンによっては、追加の接続機器や設定変更が必要になるケースがあります。場合によっては既存の電話システム自体のアップグレードが必要となることもあるため、導入前の互換性検証は不可欠です。
特にクラウドPBXやIP電話を使用している環境では、APIやデータ連携の方法に制約がある可能性もあります。
円滑な連携ができれば、顧客情報と通話内容をまとめて管理でき、必要な録音データもすぐに探し出せます。
顧客対応の一連の流れが効率化され、応対時間の短縮と顧客満足度向上の実現が可能です。また、AIによる文字起こしなど先進機能との連携も視野に入れることで、将来的なシステム拡張にも柔軟に対応できる環境が整います。
関連記事:クラウドPBXの録音機能で業務が変わる!特徴と効率化のポイント
個人情報保護に必要なセキュリティ対策
録音データには、名前や電話番号など大切な個人情報が含まれるため、適切なセキュリティ対策が欠かせません。 情報漏えいや不正アクセスを防ぐためには、アクセス制限、データの暗号化、操作ログの記録といった対策を講じる必要があります。
加えて、近年はサイバー攻撃の手口も多様化しているため、より広い視点での対策も必要です。とくに注意したいのが、サイバーセキュリティ三原則です。
- ソフトウェアは常に最新の状態にする
- 強いパスワードと多要素認証を取り入れる
- 怪しいファイルやリンクは開かない、インストールしない
上記の三原則を徹底することで、録音データを含む社内の情報資産を守るための基盤が整います。録音システム導入時には、こうしたセキュリティ面も必ず確認しましょう。
初期費用と運用コストのバランス
通話録音システムの費用は、初期費用だけでも5,000円程度のものから、20万円近くかかるものまで、幅があります。また、月額費用も3,000円から16万円と差が大きく、選ぶシステムや契約内容によって大きく変わってきます。
月間の通話件数に上限があるプランも多く、規定コール数を超えた場合は、別途超過料金が発生することもあるため注意が必要です。
費用面だけでなく、自社の通話件数や利用目的に合わせたプラン選びが、無駄のない導入につながります。
通話録音・テキスト化で顧客満足度を高める「INNOVERA」
コールセンターや企業の電話応対では、通話録音の導入だけでなく、その活用方法も重要になってきました。当社が提供するクラウドPBX「INNOVERA」は、通話の自動録音やテキスト化サービスで、対応品質向上や業務効率改善をサポートします。
外線・内線の音声通話を自動で録音
INNOVERAには標準で「全通話自動録音」が搭載されており、代表番号を使用した外線と内線における全通話の録音が可能です。通話内容の正確な把握と記録により、業務の精度向上と法令遵守の両立を実現します。
通話データはクラウド上に6カ月間保存され、通話内容の確認や検証が必要な場合にいつでも参照可能です。騒音環境下での聞き取り困難な状況や、重要情報の確認が必要となる場面でも、仕事上のリスクを最小化できます。
全通話自動録音は、INNOVERAを導入すれば追加費用なしで利用できるため、費用対効果の高いシステム構築が可能です。
FlexPlayerとの連携で録音データの検索性を大幅に向上
INNOVERAは、FlexPlayerと連携することで、スマ-トフォンやPC、オフィスの固定電話の通話音声の長期保存やデータダウンロードをより便利に行うことができます。
FlexPlayerは、録音データの検索・再生・保存ができるクラウドサービスです。FlexPlayerとINNOVERAが連携することにより、以下のような機能が利用できます。
- 堅牢性が高い仮想サーバーに通話音声を長期保存
- 検索しやすい形で管理する
- 大量の音声データを一括ダウンロード
例えば、INNOVERAは全通話録音データを一律で半年間保存しますが、FlexPlayerは契約したサーバー容量に合わせて保存します。つまり契約するサーバーの容量によっては、数年分のデータを保存することが可能です。
また、セキュリティ面では、クラウド上で仮想サーバーを契約者ごとに分離しており、他の契約者のデータコンテンツにアクセスできないようアクセス制限を行なっています。FlexPlayerを提供する株式会社オプトエスピーは国際標準規格ISO/IEC 27017に準拠しており、多重化したセキュリティ対策を行っております。
Webブラウザーからは一度に最大1000件までダウンロードすることができるため、大量の録音データの管理や分析をする際は非常に効率的です。
通話内容のテキスト化で検索・確認を短縮
INNOVERAは、オプション機能の「INNOVERA Text」を利用することで、録音データのテキスト化が可能です。録音データを最初から聞き直す作業は時間と労力を要するため、この機能は業務効率化に大きく貢献します。
操作方法は非常にシンプルで、ウェブブラウザ上の管理画面から録音データを選択し、変換ボタンをクリックするだけです。通話内容が文字データに変換され、視覚的に内容を素早く確認できます。
テキスト化された録音データは、キーワード検索に対応しており、日時、回線種別、発信元、着信先などの複数条件を組み合わせた検索が可能です。特定の案件や顧客とのやり取りを正確に抽出できるため、情報確認の時間を大幅に削減できます。
費用面においても効率性を重視した設計となっており、基本料金内に3時間分のテキスト化利用枠が含まれ、それ以上は従量課金制を採用しています。
必要な通話のみを選択的にテキスト化できるため、コスト管理も容易です。このように利用状況に応じた柔軟な活用が可能である点も、INNOVERAの強みとなっています。
まとめ
コールセンターの業務において音声通話の録音機能は「もしも」に備えるだけのツールではありません。電話応対の質を高め、顧客との信頼関係を築くためにも、重要度の高い機能となっています。
クラウドPBX「INNOVERA」を使えば、外出先でも、オフィスにいるのと同じように通話を録音でき、必要な通話内容を後からテキスト化して、すぐに確認することができます。
さらに、FlexPlayerと組み合わせれば、録音データを探す、保存する、振り返るといった一連の作業も余計な手間なくスムーズに進められます。
INNOVERAの導入により、顧客応対品質の向上と業務効率化を同時に実現するとともに、オペレーターの業務負担を軽減し、生産性向上と働き方改革の推進にもつながります。
電話対応業務の透明性と効率を高めるためにも、INNOVERAの導入をご検討ください。